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【超短編】川島瑞樹「月光」

2018/ 09/ 12
  • タグ:高垣楓 片桐早苗

  •                  
    目次
    1 : 名無しさん@おーぷん : 2017/10/19(木)20:23:46 ID:RWr

    試験的に感情表現を省いてみた
    お題スレ用

    2 : 名無しさん@おーぷん : 2017/10/19(木)20:24:28 ID:RWr

    思わず目を細めてしまうほど月が明るい夜。

    その月に負けぬほど眩しい2人の女が、とある料亭の個室にいた。

    高垣楓。

    かすかに翡翠がかった艶やかな髪。

    はかなげでありつつも不思議な温かみのある、碧と蒼の瞳。

    しなやかに、悩ましげな曲線を描く身体。

    彼女は風にそよぐ芒のようにたおやかで、優雅な風貌だった。

    3 : 名無しさん@おーぷん : 2017/10/19(木)20:25:27 ID:RWr

    それと対照的に片桐早苗は、くっきり、はつらつとしていた。

    あるいは“具体的”とでも言うのだろうか。

    みずみずしい栗色の髪。

    面立ちは童顔で、まったく邪気のないように見える。

    けれども顔に見合った小柄な身長に、見合わぬ豊満さがあった。

    2人は同じ事務所に所属しているアイドルで、

    年は3歳ほど離れていたが、

    それを気負うこともなく付き合っている。

    性質のちがいから仕事を奪い合うこともなく、他人からは、

    両者の間に亀裂を生じさせうる要素はないように見えるだろう。

    4 : 名無しさん@おーぷん : 2017/10/19(木)20:27:39 ID:RWr

    「プロデューサー君には本当こまっちゃうよねぇ」

    「ええ、本当に…」

    2人は食事の余韻をゆったりと感じながら、語り合っていた。

    それ自体はごく自然な風景だった。

    「食事はおろそかにしちゃダメっていつも言ってるのに、

     目を離すとカップラーメンばっかり。

     アイドルに心配かけるなんてプロデューサー失格よ!」

    「私達に気を回してくれるぶん、自分のことがおろそかになるんじゃないですか」

    「そう…そうね。きっとそうだわ」

     彼女達をプロデュースしているのは同じ男。

     たった1人の、男だ。

    5 : 名無しさん@おーぷん : 2017/10/19(木)20:28:46 ID:RWr

    「どうにかして負担を減らせないかしら。

     いくら好きな仕事でも身体を壊したら元も子もないんだから。ね?」

     早苗は、もう1人の女に微笑みかけた。

     楓は左小指で泣き黒子を撫でた。

    「お酒、頼みますか」

    「お願い」

     楓は呼び鈴を鳴らして、やってきた仲居に手早く注文をした。

     早苗は胸を大きくそらし、のびをした。

    「ビール?」

    「焼酎です。いけませんでしたか」

    「……グラス?」

    「ボトルです」

    6 : 名無しさん@おーぷん : 2017/10/19(木)20:29:46 ID:RWr

     早苗が次の言葉を紡ぐまえに、氷の入った2つのグラスと、

     黒々とした焼酎のボトルが運ばれてきた。

     自分達で注ぐからと、楓は仲居を下がらせた。

    「私は、プロデューサーさんにお世話になりっぱなしですね…。

     早苗さんみたいにしっかりしてませんし、

     早苗さんよりも若くて右も左もわかりませんから…」

     楓は、薄く笑みを浮かべてグラスを酒で満たした。

    「どうぞ」

    「うん。ありがと」

    早苗はグラスを受け取って、一息に飲み干した。

    彼女は酒好きであっても“ざる”ではないから、これは危険な飲み方だった。

    8 : 名無しさん@おーぷん : 2017/10/19(木)20:31:49 ID:RWr

    一方の楓は酒にはめっぽう強いので、グラスどころかジョッキを干すこともできる。

    だが楓は、ちびちびと酒を舐めた。

    「なによぉ、もったいぶっちゃって」

    すでに顔を赤くした早苗が、楓に絡んだ。

    「どうせ酔っ払っても、今日は瑞樹ちゃんが迎えに来てくれるんだし…」

    川島瑞樹は2人の共通の親友で、今日はこの場にいない。

    ちょうどバラエティの収録が入ってしまっており、

    それが終わった後に彼女達を迎えにくることになっている。

    「どうせ素面でも酔ってても手がかかるんだから、楓ちゃんは」

    早苗は名前の部分で語気を強めた。

    それを聞いて、楓も一気にグラスを空にした。

    9 : 名無しさん@おーぷん : 2017/10/19(木)20:32:31 ID:RWr

    小一時間ほどたった頃、川島瑞樹は酔いつぶれた2人に呆れかえった。

    いつもは片方が、あるいは両方が“ばか”陽気に出迎えてくれるものだったが、

    何かの拍子にブレーキがきかなくなってしまったらしい。

    「やっぱり君がいてくれて助かったわ~。

     2人がいっぺんだと、いつも大変なんだから!」

    日々の苦労がしのばれる苦笑いをしながら、瑞樹は引きずるように早苗を抱えた。

    「楓ちゃんの方はお願いね。まったく世話が焼けるわ…」

    瑞樹と、この場にたった1人の男は視線を交わし、

    窓から差し込む月光がきらめいた。

    早苗と楓は何も知らないまま、深い酔いの中に沈んでいた。

    10 : 名無しさん@おーぷん : 2017/10/19(木)20:32:53 ID:RWr
    終わり


    【超短編】川島瑞樹「月光」
    http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1508412226/
                             
                                      

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