Article

        

二宮飛鳥「雨の日」

2019/ 08/ 01
  • タグ:二宮飛鳥 佐藤心 的場梨沙 ◆C2VTzcV58A

  •                  
    シンデレラガールズ 目次

    1 : ◆C2VTzcV58A : 2017/07/04(火) 22:26:40.04 ID:H2Pmtvw8O


    休日。学校もアイドル活動も何もない、自由な一日。

    CDショップでお気に入りのアーティストの新譜を購入したボクは、満ち足りた気分のまま帰りの電車に乗り込んだ。
    わざわざCD一枚のために街に出ずとも、今のご時世ネットでなんでも買うことができる――それはある面においては確かに真実だが、あいにくとボクにはこだわりがある。
    発売を心待ちにしていた商品を、店内で直接手に取るあの感覚。シンプルながらも、えも言われぬ達成感がある。
    些細なことかもしれないが、ボクの繊細なハートにとっては、それだけのことでも重要なファクターになりうるのだ。

    だから、無事に新譜に触れることができたボクは……ありていに言えば、浮かれていたのかもしれない。

    SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1499174800


    2 : ◆C2VTzcV58A : 2017/07/04(火) 22:27:22.27 ID:H2Pmtvw8O


    電車が動き出した後で、傘をCDショップに忘れてきたことに気づいた。
    朝、小雨がパラパラと落ちてきていたから、傘を差して出かけて。
    途中でやんだので、そのまま傘をたたんで持ち歩き。
    ショップの入り口の傘立てに入れて……そのまま置いてきてしまった。なんとも不注意だ。

    とはいえ、すでに電車は何駅分か走ってしまっており、今から戻るのも手間と電車賃が余分にかかる。
    どうせ安物の傘だったし、今は雨は降っていない。今度訪れた際に残っていれば、その時持ち帰ればいいだろう。もし残っていなければ、それもひとつの選択だ。

    ――このまま帰ってしまおう。

    一刻も早くCDの中身を聴きたかったボクは、そのまま傘を見捨てることを選択した。

    けれど。そういった甘い見通しが簡単に崩れ去るのは、このセカイによくあることで。



    3 : ◆C2VTzcV58A : 2017/07/04(火) 22:27:50.62 ID:H2Pmtvw8O


    帰りの電車に乗り込んで数分。つり革に手をかけながら、なんとはなしに外の景色を眺めていると。

    「降ってきたな……」

    ぽつりと車両の窓に水滴がついたかと思うと、次々と雨粒が空から落ち始めた。

    ……まあ、この程度の雨なら問題ない。最寄りの駅から寮までは、走って遠くない距離にある。

    ……たまには、雨に打たれるのもいいじゃないか。

    雨はすべてを洗い流してくれる。
    様々な感情が張り付いた自分自身をまっさらにして、向き合う機会を与えてくれる。
    そう考えれば、時にはこういった時間も必要だろう。

    そう、思っていたのだけれど。


    4 : ◆C2VTzcV58A : 2017/07/04(火) 22:28:40.82 ID:H2Pmtvw8O


    「……さすがに、降りすぎじゃないか?」

    電車を降りて改札を出たボクを待ち受けていたのは、まるでバケツをひっくり返したかのような大雨。
    夏の空は急に豪雨を降らすというが、これはあまりにあんまりではないだろうか。
    この中に傘を差さずに飛び込めば、自分に必要なものまで洗い流されてしまうことは明白だ。

    「はあ」

    思わずため息をついてしまう。浮かぶのは、自身の行いへの後悔。
    傘を置き忘れてこなければ。気付いた段階で引き返していれば。
    そもそも、店に行かずにネットで予約しておけば――そこに思考がいきかけて、慌てて首を横に振る。

    ……よくないな。こういうのは。

    バッグの中のCDに触れながら、もう一度ため息。
    雨には肯定的だったボクだけど、今日ばかりは、少し――

    「あれ、飛鳥ちゃん?」
    「飛鳥?」

    ちょうどうつむいていたから、すぐには声の主を見つけることができなかった。
    反射的に顔を上げてあたりを見回すと。





                
    PICK UP!

    5 : ◆C2VTzcV58A : 2017/07/04(火) 22:29:21.49 ID:H2Pmtvw8O


    「梨沙に、心さん」
    「駅の改札から出てきたってことは……買い物にでも行ってたの?」
    「こんなところで3人会うなんて偶然☆ はぁとと梨沙ちゃんも、さっきそこでばったり会ったの♪」

    的場梨沙と佐藤心さん。同じ事務所のアイドルで、今は同じユニットの仲間、でもある。

    「せっかくだし、一緒に帰ろ♪」
    「あ、あぁ」
    「ん? どしたの飛鳥ちゃん」

    ボクの様子がおかしいことに気づいた心さんが、怪訝そうな顔つきでこちらを見る。

    「……アンタもしかして、傘持ってないの?」

    そして、こういうことには目ざとい梨沙にあっさり看破されてしまった。

    「……店に置き忘れてきた」
    「なにやってんのよ。不注意よ、不注意」
    「うっかり屋さんめ☆」

    正直に事情を白状すると、梨沙は呆れたような視線を、心さんはなぜかウインクを送ってきた。

    「んじゃ、はぁとの傘に入れてあげる♪」
    「え?」
    「見よ、この大きさを☆ 女二人なら余裕☆」

    心さんが見せびらかしてきたピンクの傘は、確かにかなり大きなサイズだった。

    「大きいね」
    「でしょ?」
    「ハートさん、プロデューサーと相合傘でもする気だったの?」
    「ぴゅっぴゅぴゅ~~」

    梨沙の指摘に下手な口笛を吹かせる心さん。どうやら図星だったらしい。

    「理由なんてどうでもいいだろ☆ さ、入った入った!」
    「え、あ、ちょっと」

    大きめといっても、傘は一人用だ。ボクが入ると、きっと心さんも濡れてしまうだろう。

    「遠慮すんなって♪ 親切には甘えるべきだぞ?」
    「ずぶ濡れになるよりはマシでしょ。いいから入りなさいよ」
    「……うん」

    ボクの仲間は強引だ。結局、押し切られて傘に入れてもらうことになった。


    6 : ◆C2VTzcV58A : 2017/07/04(火) 22:30:11.31 ID:H2Pmtvw8O


    「飛鳥ちゃん。もっと寄らないと、肩濡れてるでしょ」
    「雨はすべてを洗い流してくれるから、少しくらいはこうして濡れているほうが」
    「ほら、もっとこっち来い♪」
    「わわっ」

    心さんに腕を引っ張られ、彼女と密着する形になる。

    「ほら、濡れなくなった♪」
    「ちょ、くっつきすぎ……」
    「あははっ! 飛鳥、もみくちゃね!」

    悠々一人で歩いている梨沙がケラケラと笑う。ボクを押さえつけている心さんも笑っている。
    二人とも、この豪雨の中で楽しそうだった。

    「……心さん、もういい、理解った。押さえつけなくてもボクは離れない」
    「素直な子は好きだぞ☆」

    ようやく彼女の腕から解放されたボクは、ふと梨沙のほうを眺める。

    「……その長靴、新品かい」
    「うん! パパに買ってもらったの! かわいいでしょ」

    ニコニコと自慢げな梨沙。
    ボクはというと、そんな梨沙の笑顔に釣られてか、そうでなくてか。

    「そうか。よかったね」

    いつの間にか頬が緩んでしまっていた。自分でも理解るくらいに。

    「なによーニヤニヤして。まさか、アタシの長靴を汚す気?」
    「そんなことはしないさ」
    「ホントかしら。飛鳥ってたまに悪だくみするから――」
    「梨沙ちゃん、そこ水たまり」
    「えっ……きゃっ!?」

    ばしゃん、と勢いよく大きな水たまりに足を突っ込む梨沙。

    「大丈夫かい」
    「ん……大丈夫! さっすがパパの選んでくれた長靴ね! アタシの足を完璧に守ってくれたわ!」
    「ワオ♪ パパさん素敵☆」


    7 : ◆C2VTzcV58A : 2017/07/04(火) 22:30:42.52 ID:H2Pmtvw8O


    他愛のない会話を交わしながら、帰り道を歩いていく。
    雨脚はますます強くなってきていたけれど、ボクらの足取りはますます軽やかなものになっていて。

    そんな中で、ボクの思うことといえば。


    「やっぱり……雨も、悪くない」


    8 : ◆C2VTzcV58A : 2017/07/04(火) 22:35:46.64 ID:H2Pmtvw8O


    おわりです。お付き合いいただきありがとうございます。
    雨の日に女の子と相合傘したい

    シリーズ前作:佐藤心「ネネちゃんさん☆」 栗原ネネ「な、なんですかその呼び方」

    その他過去作
    小松伊吹「キス魔奏」

    橘ありす「凛さんって、顔文字とか使わなさそうですよね」

    などもよろしくお願いします


    9 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします : 2017/07/05(水) 00:08:05.16 ID:iZzl+7YDO
    すけべな人、乙


    この三人はオールウェザーでいい感じでアイドルをやってるんだな




    おすすめ記事
    アイドルマスターシンデレラガールズの関連記事
                
                                      

    コメント

            

            

     

    ブログパーツ

    最新記事